書きかけのままアップできていなかったビデオの記録です。チャンさんがコラボしたビデオアート作品、The Great Silenceの本編動画と、チャンさんによる講演動画を見つけたので……。じつは見つけたのは昨年9月、記事を書きかけたのは11月です。ああう。きちんと見て要約を書く時間がなかなか取れないうちに新刊も出て数か月経ってしまい、ぶっちゃけそちらの記事を上げたいので(^^;)こちらは取り急ぎ動画だけ貼っておきます。
一本目はAllora & Calzadillaというアーティストによるビデオインスタレーションで、The Great Silenceはこれに添えるテキストとして書かれました。
The Great Silenceはたしかにビデオとのコラボなんですが、単品で読んでもこれぞ「テッド・チャン節」!という感じで大好きな一本です。初出はネットで読み、その後単品で販売されていたkindle版も購入してしまいました。 今回新刊 の "Exhalation"に収録されたので、興味を持つ方は多いビデオだと思います。
チャンさんのトークのテーマは "HERE COMES THE BOOGEYMAN What does Silicon Valley get wrong about AI?" (『ブギーマンがやってきた:シリコンバレーはAIについて何を誤解しているか?』) 前回の記事でご紹介したBuzzFeedの投稿記事と通じたテーマみたいですね。
@brainbarcom at Corvinus University of Budapest @SAPNextGen amazing discussion with Ted Chiang Rockstar of new millenium sci-fi: Here comes the Boogeyman-What does Silicon Valley get wrong about AI? pic.twitter.com/3KkjNs5Oia
他でチャンさんご夫妻を"Down to earth"(地に足がついている)と形容したツイートを見かけて、これも膝を打ちました。作家としてというより「ロックスター」としてのチャンさんに感じる魅力はまさにそこ。それを「クール」と感じる私たちは、たぶん「地に足のついた」知性に触れることにすごく飢えてるんでしょうね。(笑)
01:33 How Ted's Story of Your Life became Arrival (『あなたの人生の物語』から『メッセージ』への経緯) 26:32 Experiential and theoretical grounds for determinism (決定論の経験的・理論的根拠) 33:58 If the future is set… Why bother? (もし未来が決まってるなら……何を気に病むことがある?) 54:02 The Predictor—an imagined device that will freak you out (プレディクター――あなたをパニくらせる架空の装置) 63:24 Wormholes and time travel (ワームホールと時間旅行) 84:27 Are free will and determinism compatible? (自由意志と決定論は両立するか?)
でも、人が「こうしよう」と意識する前に、そうするために筋肉を動かす信号はすでに脳から出ている、という研究結果が知られていて、この作品のプレディクターはその信号を拾ってるんだよね?と思った記憶があります。(作品の中ではそのからくりは言及されなくて、それによって人間が受ける影響のほうを「思考実験」しています。普通SF作品だとからくりの説明のほうに力を注ぎそうですが、そのへんもチャンさん節かな?) ライトさんがまさにその点を指摘したところ、本人が意識しない場合も予告できるとのことでした。たとえば何かランダムにボタンを押す機械を作ったり、うっかりボタンを押した場合もそれを予告できる装置。この予告/予知は「逆方向のタイムラグ(Negative time lag)みたいなもの」だとおっしゃっています。本文でも"negative time delay"と表現されていますね。
TED(講演シリーズの)にも登場歴があったので一本見てみたんですが、ちょっとシニカルでとぼけたユーモアのある語り口です。ビデオでは、にこやかなチャンさんとは対照的にふてくされているように(笑)見えますが、そういう芸風の人みたい。『メッセージ』で言及された「ノン・ゼロサム・ゲーム」がテーマと思われる『Nonzero: The Logic of Human Destiny』という本も書いてらっしゃるので、読んでみたいです。邦訳出てくれないかなっ♪