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2024/06/08

「AI(人工知能)に本当の《知能》はない」:インタビューと基調講演の予定

このインタビュー、短いですがめちゃくちゃ濃いです! AI周辺の問題にご興味のある方(そして創作やメタファーというものにご興味のある方)なら「どなたにでも」ご一読をおすすめします!(本質的なレベルのお話で、この方の小説の予備知識は不要。話題は作品ではなく現実のAIです

先週Twitter(…じゃなかったX💦)で拾ったインタビューなんですが、これが6/12にソウルで開催されるハンギョレ・ヒューマン&デジタル・フォーラムの基調講演を控えた事前インタビューなのでした。私事が立て込んでアップが遅れるうちに、なんとなんと、通りすがりの韓国の方からこちらを含めた関連情報リンク集をいただきました!ありがとうございます!合わせて記録させていただきます♪
【2024/6/15追記:「通りすがりの謎の人」扱いをしてしまいましたが、韓国でチャンさんの作品を翻訳しておられるキム・サンフンさん[金相勳/김상훈/ Kim Sang-hoon]だとわかりました!(大恐縮です☆)お名前を併記することをご快諾いただけたので、この場を借りて改めて御礼申し上げます】

インタビュー

さて、まずはインタビューから。(最初に拾ったページは英語版でしたが、元サイトに日本語版があり遡ったら邦訳があったので、そちらにリンクします)

ハンギョレ・ヒューマン&デジタル・フォーラム基調講演事前インタビュー
「SF小説家テッド・チャン「AIに本当に知能がある?…そうは思わない」」
(文中に「ハンギョレ人」とあるのは、たぶん「ヒューマン」が自動翻訳か何かで誤変換されたのでは、と思います。同様に少しだけ不自然なところもあるので、引用は英語版からの拙訳を交えた解釈で書きます)

インタビュアーは、フォーラムでチャンさんとディスカッションをする物理学者のキム・ボムジュンさん。中で、The New Yorkerへの寄稿でのAIのたとえ(「ぼやけたJpeg」や「マッキンゼー」)が印象的だったことから、「メタファーの持つ力」について尋ねています。チャンさんはマッキンゼー」について、「マッキンゼーというコンサルティング会社なんて聞いたこともない人がたくさんいるので」良い例えだったとは思っていない、とおっしゃっています。いつもながら「伝える」ということに対して誠実な態度で清々しい。でも、「ええっ、逆にこれをきっかけに調べられて勉強になったわぁ♪とか喜んでるのもここにおりますですよ♡」とか思った次第です。(笑)

「メタファーは馴染みのない概念を理解しようとするときに役立つけれど、そのまま当てはまるわけではない。理解するための手始めの手段に過ぎないことを、常に覚えておく必要がある

フィクションの果たす役割の一部も、重なってくるように思えますね。

(上記で触れているThe New Yorkerへの寄稿は、こちらの記事でご紹介しています)
「ChatGPTはWebのぼやけたJPEG」を読んで」
「『AIは新たなマッキンゼーになるのか?』を読んで」

基調講演では、AIに本当の意味での知能はないこと、大規模言語モデルが実際に扱っているのは言語ではないこと、生成AIはアートを作る道具ではないこと……について話す予定だそうです。感情として大共感なのですが、自分は説得力のある「根拠」を示せないので、いつも手堅いチャンさんの説明を聞いてみたい。事後に要約でもいいからテキストで公開してくれるといいですね。

インタビューには、他にも「良いストーリーを作るシナリオと、現実に起こるかもしれないシナリオは明確に区別するべき」(AI業界の人がSFの「シンギュラリティ」を現実のものとして語りたがることへの指摘)などなど、すっごく大切な視点ばかりなので、ぜひ元ページをご覧ください。(いやもう、このインタビューをネタにしてたら3本も4本も記事ができてしまいそうです!)

*     *     *

関連リンク

…で、これをアップしようとしていたところにいただいたのが、前述の韓国の方からのメールでした。何年か前にも、通りすがりの韓国の方から情報をいただいたことがあるのですが……お名前やアドレスが違うので別の方なのかも。【2024/6/15追記:前述の通り、翻訳家のキム・サンフンさんです☆】とにかく嬉しいことです。この場を借りて厚く御礼申し上げます!

では、以下はいただいたリンクです。


チャン氏を含む4名の講演者さんの紹介ページ

https://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_national/1141477

フォーラムでは講演者全員が参加するディスカッションもあるそうです。説明を読むと興味深い方々ばかりなので、聞き取りの壁がなければ拝聴したいなぁ……。


基調講演事前インタビュー英語版

[Interview] ‘AI is not really intelligent’: Ted Chiang on science and fiction in the LLM boom

自分が最初に見つけたのもここでした。日本語版でわかりにくいところがあれば、こちらをブラウザ翻訳などで読むと具体的にイメージしやすいかもしれません。(この手のサービス、まだ英語がらみの翻訳のほうが圧倒的に精度高いですもんね☆)


物理学者キム・ボムジュンさんのYouTube動画

https://www.youtube.com/watch?v=CS9EdqAJvBQ 

今回ご紹介した事前インタビューと、当日のディカッションをご担当なさるボムジュン教授が『バビロンの塔』をご紹介なさっている動画です。チャンさんのファンなんだそうです。ディスカッションも深いものになりそうですね。


来韓記念ブックトークの参加申し込みページ

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf1ZPj_xTYzJdEhjnQO08GIzsOSs-iyRlF3dMEC7BRvzmFfbw/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0

こちらはもう締め切られていますが、こういう催しもあるんですね。参加できる方がうらやましい……♡


*     *     *

読み終えての雑感

ちょっと前までリモート参加のイベントが多かったですが、直参が増えてきましたね。特にフィクションがらみでなくAIがらみの催しへのご登壇が増えた印象。この話題の周辺はものすごい速さで状況が進行していますが、資本主義への問題意識を基盤に据えたチャンさんの視点は、共感できますし、上滑りしない認識の仕方で実感として理解しやすいです。これは現実に起こっていて、私たちはリアルタイムに立ち会っていて、ほかのいろんな問題とも絡み合っている——。個人的にはまだ半分SFを見ているみたいな感覚もあるんですが、これ他人事ではないですよね。

自分が一番恐れているのは、AIの反乱とかハリウッドチックなことじゃなくて、じつは環境問題の方です。(そして経済の不均衡、それに連なった軍事紛争……あれもこれも資本主義とがっつり絡み合った問題に見えます

偶然ですがつい先日、国連のグテーレス事務総長が化石燃料企業の広告禁止を訴えた(BBC日本版の記事)際に、「このままでは2030年(聞き間違いでなければ)までに気温が大幅に上昇する」と話していたのを、病院の待合室のテレビで見かけてすごくショックでした。すぐじゃないですか! なんで広告の禁止なんてレベルで騒いでいるの? いやそれどころじゃないでしょ、という感じで。

そしてそれ以上に、待合室の人々がその映像に特に目を向けることもなく、前を通り過ぎていく光景がシュールで。え、私の感覚がおかしいんだろうか。これすごいこと言ってない? …と思いつつ、だからどうするというのか、というと何もしていない。……そこまで資本主義が私たちののーみそに浸透していて、「病状」は深刻なのでしょうか。このまま崖から落ちるレミングの一匹になるしかないのでしょうか。

もしAIが役に立つものなら、こういう問題の解決にこそ貢献する使い方を、人間が考え出さなきゃいけないんですよね。よく似た偽物を作るためなんかじゃなくて。

「人工知能」なんてドラマチックな命名に惑わされてしまいますが、AIはプログラム。どんなに複雑だろうと、一人歩きする別種の生命体ではなく、人間が使う「道具」なんですから——人間しだいです。本当に。

でもその当事者になり得る層の人々と自分たちの間に、どうしようもない乖離を感じるのです。物理的にも、精神的にも。どうしたらいいんだろう。どうなるんだろう。少しでも望ましい方向に進むために、一般の個人ができることはないんだろうか。

…自分一人なら、たぶんこんなところまで考えることさえできません。知識人・文化人さんの役割の一つは、私のようなボンヤリなパンピーにまでこういう視点を持たせてくれることでしょう。その意味でチャン氏の発言は信頼しているし、今後の発言も追っていきたいです。もう小説家さんとしてではなく。小説じゃなくていいです。でもこういう言説を追って満足するのではなにか違うとも感じています。これは個人の課題です。

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取り急ぎ、開催が迫っているイベント関連のお話でした。これの前に見つけた講演記録があるのですが、私事でアップが遅れまくっています。まあ事後なので慌てずに……改めて記録します。