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2024/08/07

「ライティング」というテクノロジー:アリゾナ州立大学講演記録

私事に追われてだいぶ時間が経ってしまいましたが、今年の2/15-16にアリゾナ州立大学で行われたレクチャーその他の記録です。内容も充実してますが、公式ページで過去のインタビュー紹介をしていたり、別の意味でも充実しているので、ひととおりリンクしておきます。

開催後のまとめ記事


Leading science fiction writer Ted Chiang explores technology's impact on writing
https://news.asu.edu/20240216-arts-humanities-and-education-leading-science-fiction-writer-ted-chiang-explores
 

ライティングがいかに優れた「テクノロジー」であるかを指摘なさっています。(ブラウザの自動翻訳ではwritingが「書き言葉」となるのですが、「書くという行為」全体を指しているように見えるので「ライティング」としておきます)言われてみると確かに、ということばかり。

 

「ワープロソフトの代替品という意味ではありません。ライティングと同様に考えをまとめるのを助け、プレゼンテーションの言葉選びを助けるもののことです。この点でライティングよりも優れた、なんらかのコグニティブ・テクノロジーはあるでしょうか? ライティングにとって代わるものが、デジタルメディアの中にだけ存在し得るのでしょうか?」
“I don’t mean a replacement for word processing software. Is there some sort of cognitive technology similar to writing, but better than writing that will help you articulate your thoughts and choose the words you will actually say when you give your presentation? A successor to writing that can only exist in a digital medium?”

コグニティブ・テクノロジー”cognitive technology”…「認知的技術」とか直訳しても意味がなさそうなので、ちょっと調べてみました。一般的にはコンピューティングの用語らしく、人間の認知を模倣するシステムである点はAIと同じような……でも、AIのように勝手な最適解(お門違いなこともある!)をひねり出すのではなく、あくまで人間の意思決定を支援するもの——を指すようです。

 

あまりに身近すぎて、ライティングを代替可能な(?)技術として捉えるのは自分にとっては難しいです。それでも個人的な実感として、「書き出すことで思考が前進する」のは意識しています。頭の中だけだとぐるぐるしてしまうので、書き出したもの(一言でもいい)を自分で読んで、そこから刺激を受けて書き継ぐことを繰り返します。(さらにあとで編集します) たぶんこの「目と脳へのフィードバック」を含めた螺旋状のプロセス全体を「ライティング」とおっしゃっているんじゃないかな、と解釈しました。ただ、「口述筆記」ができる人は、自分とはまた感覚が違うかもしれないなー、とも思います。(自分には絶対無理。チャーチルはすごい!(笑)草稿からまとめた人が優れていたのかもしれませんが……)

 

他に印象的なところをメモします。(ほぼすべてで長くなるので拙訳のみで失礼)

 

(意識を持つマシンについて)
「自分たちが作った意識を持つマシンに対して、どんな種類の敬意を払うべきでしょうか?」

 

AIについて)
「現在のところ、私たちの目の前にあるものは、強化された自動補完(オートコンプリート)にすぎません」「テキストの統計的特性を明らかにするという面では、確かに興味深いものです。しかし敬意を払うほどの価値はありません。違うことを主張する者は、あなたに何かを売りつけようとしているのです」

「多くの人が、テクノロジーは人間性を奪い取るものだと感じています。裏付けとなる状況は充分にあり、確かにそうだと感じさせられます」

「しかし、もしも人間性を奪うのでなく、かえって人間性を与えてくれるテクノロジーがあるとしたらどうでしょう。それこそがライティングです。ライティングは、私たちが創造的になることを助け、理性的になることを助けます。これらは人の活動の中でもっとも人間らしいものです」

 

他にも、リズムや韻律が(大昔の口承文学の伝統がなくなり)ポップミュージックの専売特許になって、まじめな場面では使われなくなったことなど、興味深いご指摘でした。ときどきこの方の発信を読むのは脳トレになりますね。(^^)



 事前告知ページ


Exhalation and Other Worlds with Ted Chiang - Humanities Institute Distinguished Lecture 2024215日)

https://asuevents.asu.edu/event/exhalation-and-other-worlds-ted-chiang-humanities-institute-distinguished-lecture?id=0

参加無料でライブストリームもあったようです! ああ聞きたかった……(ヒアリング難民ですけど☆(^^;)

インタビューリンク


講演者の紹介として、過去のニューヨーク・タイムズのインタビューリンクまでありました。親切ですね。過去に記録していないと思うのでリンクしておきます。(音声ありなので美声も聞けます。でも聞き取り難民にはトランスクリプトなのがありがたい☆)

「スーパーヒーローは国家による不正には何もしてくれない」など、いつもながら鋭く、うなずけて、視野を広げてくれるお話が読めました。ざっと目を通しただけなので、じっくり読み直したいです。
個人的な偶然ですが、最近読んでる本に聞き手のエズラ・クラインさんの名前が出てきて「おや」と思いました。本ではワシントン・ポストの記者とありましたけど……専属ではないのか、あるいは移動したのかな?
 

『メッセージ』上映イベント


こちらは翌日の有料イベント。

ARRIVAL with author Ted Chiang2024216日金曜日)
https://asuevents.asu.edu/event/arrival-author-ted-chiang?eventDate=2024-02-16&id=0


『メッセージ』上映と、チャン氏による原作と映画についてのお話、質疑応答、サイン会という……なんて贅沢なんでしょう!参加できた方々が羨ましいです♡

*     *     *

以上でした。書きかけてからなかなかまとめられなくて、えらく時間がかかってしまいました。とりあえずアップ出来てほっとしています。じつは先月あたりから熱中症が抜けず、いくつか書いてるブログの中でもここは「脳みその負荷」が高めなので、ぼーっとゆだっている頭では書くのが難しくて。(^^;) 引用訳などまだまだ手をいれたいところですが、リンク先のチャン氏の発言は時期を問わず読む価値があると思います。ブラウザ翻訳でおおざっぱなところは読めるので、多くの方がご覧になれますように。(明らかにヘンな自動翻訳は読んでてわかりますもんね。チャンさんの名前がいちいち「蒋介石」になっちゃうとか……(笑))