インタビューの記事をアップしようとして、ついででググったら3日ほど前にトレイラーが公開されていたということで、前後しますが先にそちらを貼ります。いよいよなんですねえ…!
〈※引っ越し時追記:当時埋め込んだ動画は再生できなくなっているので、別の公式トレイラーを貼ります〉
インタビューは見つけてからだいぶ時間がたってしまいましたが、ようやく記録します。がっつり"Arrival"(『あなたの人生の物語』映画版)に触れてるインタビューです!なにより嬉しかったのは、ご本人が「典型的なハリウッド・ディザスターになることはなんとか避けられたように思う。見るのを楽しみにしてるよ 」と請け合ってくださったこと。そして新しい情報として、他にも映像化待機作品が(そしてぽしゃった作品も)あるとのこと。ご本人という一番確実なソースなので、その部分だけこそっと拙訳で。元ページはこちらです。
The Legendary Ted Chiang on Seeing His Stories Adapted and the Ever-Expanding Popularity of SF
他にも、SFを知る前の子供の頃はネッシーやビッグフットなどの不思議系ノンフィクションが好きだったこと(うわー親近感♪(笑))や、創作についてのお話など、すごく読み応えがあって楽しいインタビューなのですが、なにしろ長いし全訳載せてしまうのもなんか問題ありそうな気がするので(^^;)、ここには前述の映画化関連のとこだけ載せます。他の部分もブログなどで一部ずつご紹介するかもしれないので、そちらで訳した場合にはこのコーナーにもリンクを貼りますね)
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以下、MはインタビュアーのMeghan McCarronさん。Cはチャンさん。McCarronさんは10年来のお友達とのこと。
「もしあなたが深夜1時にホテルのロビーに座っていて、言語の本質について討論したいと思うなら、彼はまさにうってつけの相手」と面白い紹介をしています。実際メールでそれについてやりとりなさったようです。(面白そう!その話の中身も読んでみたい♪) …なので、語調は友達同士という感じで訳させていただきました。急いだので言葉がこなれてませんがご了承下さい。(時間がとれたら少しずつ整えますー)
M; 『あなたの人生の物語』は、ある言語学者がエイリアンの言語を学ぶ過程での個人的な変容を描いていて、今は映画になろうとしてる。物語が映画というエイリアンの言語に変容するのを見るのはどんな感じだった?
C: うまい言い方だね!映画はまさにエイリアンの言語だ。別の言い方をすると、少なくともある程度うまく聴くことはできるけど、自分ではまったくしゃべれない言葉だ。これはある程度のレベルではずっとわかってた。だけど初めて『あなたの人生の物語』の脚色についてアプローチされたとき、それを思い出したよ。映画にするために売り込んだことなんか一度もなかったストーリーだから。そしてこれは僕たちが話した、書き言葉がどれだけ深く僕らの意識に組み込まれているかって話とつながる。ストーリーが頭のなかで形をとるとき、僕が考えているのは文章なんだ。もし僕が脚本家だったら、シーンを思い描いてると思う。この二つのストーリーテリングの間の違いはいかに深いものかって考えさせられたよ。
本を映画に脚色するプロセスも、僕にはミステリアスだ。具体的には、映画の『L.A.コンフィデンシャル』とその原作になってるジェームズ・エルロイの小説の違いを考えてる。僕は映画を見たあとに小説を読んだ。そしてすごく驚いたんだ。映画のプロットはかなり込み入っていたけど、小説の大規模で不規則に広がる陰謀とは比べるべくもなかった。もし小説を先に読んでいたら、映画に脚色するのは不可能だと言っただろう。だけど脚本家たちがしたことは、小説の主人公たちを取り出して、そのキャラクターたちが基本的に同じ役割を果たせる、まったく新しいプロットを構築することだったんだ。できあがった映画は、小説のテキストにはかなり忠実でないにも関わらず、小説のスピリットには忠実だった。これは僕には思いつかなかったアプローチだ。僕なら、なんであれ映画に脚色するとしたらオリジナルを尊重しすぎてしまうと思う。
それから、映画の完全に産業と化した製作、という側面がある。僕が理解したほんの少しのプロセスを元にして言えば、映画を作ることは、ノルマンディ上陸作戦を計画しながら、同時に芸術作品を作ろうとするようなものだ。複雑な事業計画の悪夢を乗り越えていい結果を出す映画は、どれも一種の奇跡だ。『あなたの人生の物語』の脚色プロセスは比較的スムーズだった。速くはないと思う――僕が最初にコンタクトを受けてから五年経ってる――だけど関わる料理人が多すぎたってわけじゃない。プロジェクトは、典型的なハリウッド・ディザスターになることはなんとか避けられたように思う。見るのを楽しみにしてるよ。
M: ほかに映像化の契約をしている作品はある? でなきゃ、特にほかの媒体に移されるのを見てみたいと思う作品は?
C: これまでに契約してるほかの作品は2、3ある。だけどそれらはプロセスの初期の段階にあるから、話すのは時期尚早だと思う。
何年か前、僕の『地獄とは神の不在なり』を原作にしたテレビシリーズを売り込む許可を求める監督からアプローチを受けたことがある。これも僕には思いもよらないことだった。あの話は幅広いオーディエンスにアピールするにはあまりに救いのない、陰気な話だったから。だけど彼は、人生において天使の降臨が起こす波紋と向かい合う、という形で信仰の問題と格闘する人々に焦点をあてるシリーズを構想してた。何度か話をして、僕は彼に納得させられた。自分が見てみたいシリーズだと思えたんだ。その監督は彼のアイデアをあるネットワークに売り込んで、ネットワークは彼にパイロットの脚本を書かせるくらい興味を示した。だけど結果的には、宗教的な側面を気にして見送ることを決めた。その種のテレビシリーズの機会は閉ざされて、今はThe Leftoversが放映されてる。だけど、あの話がビジュアル媒体に移されるのを見ることには今でも興味があるよ。
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『地獄とは神の不在なり』は、個人的にはチャンさんの作品で一番ビジュアル化しやすいと思った作品なんですけど……そうかあ、宗教的側面。日本ではそんなに気にならないけど、アメリカでは難しいのかもですね。残念でした。でもまだチャンスはあるかも。そそられる題材ですから放っておかれないでしょう。もし"Arrival"が成功したら、次は企画が通りやすくなるはずです。
他に個人的に驚いた偶然が、自分も映画化の話題が出たときにここの記事で例として出した『L.A.コンフィデンシャル』のお話をしていらしたこと! ファンモードで飛び上がるほど嬉しかったです。 映画→原作という順番も同じで…というか、あの映画見たら原作気になりますよね~。(笑)
ただ、自分は映画好きが軸足なので、原作は映画に惚れ込んで「なんでこんなに面白いんだー!」とさんざんリピートしたあとに読んで、「映画にするには足りないものがある」と感じたんです。そして原作にない「ロロ・トマシ」の工夫を理解してヤラレました。一時的にブライアン・ヘルゲランド(これでアカデミー賞の脚色賞を受賞しました)のファンになって、彼が関わった作品追っかけたくらいです(笑)。その後離れてたんですが…え、『レジェンド 狂気の美学』ってこの方が脚本・監督だったのか!見なければー!
…閑話休題、チャンさんも基本的には同じことを指摘してらっしゃるのですが、軸足が小説の方なので、微妙に違う見方なのが興味深かったです。映画の話、もっと読みたいなあ……映画なら理解しやすいので。
そしてそういう尺度を理解しているチャンさんが、今回の映画化を大丈夫だろうと予想してる、ということは、「ディテールは原作に忠実でもベクトルが外れてる作品」にはなってない(可能性が高い)、ということだと思います。それが嬉しい。それって「映画として」いい作品になってくれてる(可能性が高い)、ということですから。映画好きとしては、そういうものを見たいです。
ともあれ、映画は今年秋公開とのことなので期待です。そのうち「探さなくとも」この映画のニュースがあちこちで読めるようになるんでしょうね……このキャストなら日本でも劇場公開してくれていいと思うし、ほんと楽しみです。