2025/08/14

「SFを通じて資本主義と戦う」

スペイン、バルセロナのフェスにゲストとして参加なさった際の記事を見つけました。昨年11/10掲載のものです。残念ながらスペイン語はわからないので、ブラウザの自動翻訳に頼りました。以下に引用する訳文も自動翻訳のものなので、限界はあると思います。ご了承くださいませ。


▶Ted Chiang: “Elon Musk y Donald Trump son peligrosos”
(テッド・チャン:「イーロン・マスクとドナルド・トランプは危険だ」)

https://www.zendalibros.com/ted-chiang-elon-musk-y-donald-trump-son-peligrosos/

資本主義の暴走への警鐘はAI周辺の話題の中でよく拝見していましたが、より「現実」に踏み込んだ発言を読んでみたかったので、これは読めて嬉しかったです。

冒頭の紹介文はこちら。

今年の第42回ファンタスティック・ナラティブ・フェスティバルのゲストスターである中国生まれの米国人作家テッド・チャンは、バルセロナでSFを通じて「資本主義と戦う」という声を表明し、「AIは、言われているほど私たちを心配させるべきではない」と主張した。


…「資本主義と戦う」が印象的で、そこまで直接的な表現をしたんだろうか……と驚きました。「中国生まれ」も正しくないので(ご両親がアメリカに移住したあとのお生まれで「中国系アメリカ人」のはず)自動翻訳でニュアンスがズレちゃったのかしら……と思ったんですが、いったん英語に自動翻訳してみたところ"has expressed his voice in Barcelona through science fiction to "fight capitalism" 。うーん、そう逸脱してはいない?(お生まれに関しては、今Wikiを確認したら、「台湾系」になっていました。以前はよくおおざっぱに中国系と紹介されていたと思うのですが。うーん、世界情勢の反映でしょうかねぇ……)

原文自体が誇張している可能性もありますが、逆に場所がスペインで、英語圏でないからこそ出てきた発言、ということもあるかも。(日々の海外ニュースでスペインの話題も見かけますが、思想的・政治的な立場をはっきり表明するのが当たり前の社会のように見えます。あ、別にスペインに限らないか……自分がノホホンとし過ぎなんですね。(^^;))

過去の作品からは「資本主義と戦ってる」雰囲気は感じませんが(繰り返しになりますが、自分にとってのチャン氏の作品の魅力は審美的な側面が圧倒的)、これからの作品でどう昇華されるのかな、と楽しみです。決して短絡的な意見小説などお書きにはならないでしょうから。


ご本人の発言として紹介されていた中で、特に響いたのがここ。

資本主義の終焉よりも世界の終焉を想像する方が簡単だが君主制神授説の終焉を想像するのもまた難しかった。王の終焉を想像できた者は誰もいなかった」


確かにそうですね。現状への文句どまりではなく、より大きな視野で話してくださるのが嬉しい。自力ではなかなか手に入らない視野です。

学者さんが過去・現状を精査するのに対し、作家さん——特にある種のSF作家さんは、「未来を外挿する」視点を強く持つことが特徴だと思います。それも「現在の延長」に縛られない想像力を伴って。

作家さんの政治的な発言についてはさまざまな見方があると思いますが、個人的にはこの方の考え方・切り口に共感することが多いので、すごく興味があり、今後も読んでみたいです。

▶フェス自体の紹介記事を見ると、ワークショップや展示のほか、鳥山明さんの追悼式や『マトリックス』の25周年記念行事なんかもあって多岐にわたっていたようです!見てみたかったなー☆



Zendaというサイトそのものの玄関を見てみたら、すごく面白そうで、どういうサイトなのか興味が湧きました。説明はこちら。

▶Bienvenidos a Zenda(ゼンダへようこそ)
https://www.zendalibros.com/bienvenidos-a-zenda/


ちょっと長いけど冒頭を引用します。


このアイデアは、数人の作家仲間との会話の中で生まれました。文化や書籍が困難な時期を迎えている今、まるで公共の場のように、それぞれが自分の本、自分のコメント、あるいは貢献できることを持ち寄って集まれる、自由で独立した空間を作ったらどうでしょうか。そこに、興味深い書籍のレビュー、楽しい読書、オピニオンコラム、ブログ、推薦文、ニュース、インタビューなどを組み合わせたもの。良いとか悪いとか、レッテルやイデオロギーにとらわれず、本や文学についてしか質問されない、一種の共通の基盤や広場、外人部隊のようなものを作れないでしょうか。そこから読者をスペインやアメリカの主要新聞の書籍雑誌や文化特集へと導くことさえできるような場所。読者、ジャーナリスト、編集者、作家、文芸エージェント、新人作家、書店員、そしてラテンアメリカ文学の世界に関心を持つ誰もが、心地よく感じ、互いにつながることができる場所。


ステキなコンセプトですね。日本でもそういうのがあったらいいのに……。一時期は期待していたnoteが、利用してみたら予想外にビジネス臭というか誘導が強くてゲンナリしていたところなので、自由を尊ぶ知的な雰囲気がうらやましくなりました。(たとえばnoteでは、AIについては批判的な見方が存在しない前提のようで、「どう使うか」というお題で書くことをしきりに勧められます。スポンサーのお達し、というレベルで運営されてるのかしらん。なんとなく思想統制めいた気持ち悪さを感じるのは私だけでしょうか……☆(-_-;))

…隣の芝生かもしれませんが、このZendaさん、ときどき覗けるようにブックマークをしておきました。自動翻訳でもある程度読めますので。(^^) (ときどきキテレツな訳が出てきますが、それは逆に「ここは間違ってるな」とわかります。そこは想像力で補って……(笑))

ちなみにサイト名は『ゼンダ城の虜』からとっているそうです。読んだことがなくて、反射的に思い出すのは野田秀樹さんのお芝居でこのタイトルを「いただいてる」のがあったっけ……ということくらい。機会があったらネタ元を読んでみなくちゃです☆


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Xをほぼ使わなくなって、チャンさんの情報も自分の時間がある時に検索する形になりました。テキスト検索だとご本人以外の、レビューやブログなどのページが圧倒的に多く出てくるので(自分のブログ記事が出てきて拍子抜けしたこともありました(^^;))、最近編み出した裏技(?)が画像検索で探すことです。書影や見覚えのある写真でなければ、自分が未読のご本人関連の記事に添付されている確率が高い。最近はYouTubeもよく見るので、そこでチャンさんの動画を何度か見たら勧めてくれるようになり、こちらは素直にありがたいなーと思います。ま、料理レシピやら剪定指導やらの動画を続けて観てしまうと、またオススメも変わってしまうんですけど……。(笑)

2025/08/08

インタビュー音声(自動翻訳字幕利用可):サンノゼ州立大学 In the Reeds (Podcast)

少し前にYouTubeで見つけて、「後で見る」に入れていたインタビューです。今年の四月のものなので、比較的最近ですね。YouTubeも自動翻訳字幕の精度が上がってきたので、聞き取り難民の私でも聞く/読むことができてありがたいです。(単純にチャン氏の声は好きなので楽しいですし(笑))

聴けたのはまだ半分ほどですが、創作プロセスについてや、SFとファンタジーの違いなど話しておられます。以前からよく話してらっしゃるテーマなので、復習という感じ。でも新鮮なところもありました。特に創作をなさる方には刺激になる内容だと思います。


#16 Ted Chiang Interview April 2025



執筆プロセスについては、以前から「何度も繰り返し頭に浮かぶアイデア」があるとそれを吟味して、「結末を決めてから書き始める」とはおっしゃっていますが……いくつか考えたシナリオから選ぶプロセスでは、ストーリーに登場するものは書かず、自分の考えを大量にメモする、というのが新情報で、なるほどと思いました。

そしてどのシナリオが「自分が同意できる立場」にたどり着くか、という表現もちょっと響きました。自分はそういうもの(自分が同意できる立場)は無意識のうちににじみ出るものだろう、くらいにしか考えていなかったので。そもそもストーリーで哲学的な疑問を解明しようなんて考えてないよーん、とか言いたくなりますが、これって落ち着いて考えると自分の根っこにある価値観、とも言える気がする。「哲学的」という訳語に惑わされてはいけないかもです。

個人的には、チャン氏の物語から哲学的というより審美的な側面を強く感じるし、それに魅力を感じてもいるのですが……氏の言う「哲学的な疑問/問題」(philosophical question)は、「自分の中から出てきたもの」を書く時には誰にとっても不可欠な基盤である気がします。意識するかしないかに関わらず。(ただ、意識しないと出てこないものは絶対ある気がします)


…改めて、比べても仕方ないけれど自分なんぞとは違うなあ……☆とタメイキが出ます。自分は結末を決める前から思いつきの「シーン」をバラバラに書き散らしがちで、ストーリーラインが分岐した草稿が大量にできてしまいます。そして収拾がつかなくなり……今やってるものはその段階で数年止まっています。(最近は時間がとれなくなったのもありますが(^^;))なんかこういうプロセスって、脳みそのとっちらかり具合がそのまま反映してしまうようで……整然としたお脳みそがとてもとても羨ましいです。(それでもチャン氏は「書くことは自分にとって難しい」と折々おっしゃっているので、きっとその過程で七転八倒なさっているに違いないのですが)

ともあれ、暑さで頭がぼーっとしている中、お話をボンヤリと聞いているうちに、刺激を受けてシャキッとすることができました。(じつは昼の猛暑を避けて早朝に24時間営業のスーパーへ買い出しに行き、それでも熱中症がぶり返してゲンナリしていたところでした(^^;))おかげで久しぶりにこのブログも更新することができました。

チャンさんの発信するものは、急流に流されてあっぷあっぷしている時に、すがれる岩というか……そんな感じがしています。(なぜか小説でないもののほうが特に) 

サンノゼさん(すみません、略し過ぎ(笑))には、無料で公開していただいて感謝です。残りも少しずつ見ていこうと思います。

2025/02/16

2010年7月分まで過去記事をアップしました。

過去へと遡りながら記事を移しているブログ引っ越し、ようやく2010年7月まで終了しました。最新の引っ越し記事は

「インタビュー記事と、SF大会のお知らせ」(2010/07/26) です。

この年の夏は、日本SF大会でチャンさんの作品をテーマにした生け花展示をさせていただきました。その関係でリンクが多く(SF大会さんのページは残っていてよかったです!(^^))、リンク先にしていた旧自サイトを閉鎖してしまったため、少々手間取りました。

該当する部分は以前ブログの独立ページに転載していたので、関連のアレコレを整え、タイトルも少し改めて、そこにリンクする形にしました。自分としても思い出深い記録をきちんとまとめることができてよかったです。ブログヘッドにあるページリストにも加えましたので、よろしければご覧ください。(フロア担当様がチャン氏から頂いてくださったコメントも掲載しています)

ついでに展示全体の紹介記事も転載しました。もうひとつの展示、「フランケンシュタイン」をテーマにした生け花紹介記事へもリンクしています。映画版がインスピレーション元なので、そちらはピーター・カッシングのファンブログに、独立ページとして同様に転載しました。こちらもよろしければ合わせてご覧ください。



他の記事からリンクしている過去記事は前倒しで引っ越しているため、これ以前のものもいくつか転載済みですし、記事を記録し始めたのは2007年。いよいよ残り少なくなってきました。元記事の日付で追加しているため、タイムトリップ感覚(笑)が楽しめて終えるのが惜しいくらいですが、完了して現在に復帰(?)できるようがんばります。(でも確定申告やら町内会の引継ぎやらの時期に突入し、他の更新等もあるので、ちょっと時間がかかるかもしれません☆)

2024/12/20

2016年分まで過去記事をアップ&年末のご挨拶

 過去記事の引っ越し状況です。新しいのから遡ってアップしてまして、そのうえ記事からリンクしている過去記事は前倒しで引っ越しているため、境目がわかりにくくなっておりますが……本日移した最新過去記事(?)が2016/04/15の「ポッドキャスト:映画『Looper』を語る」になります。


じつは少し前から、過去記事の追加が最新投稿の自動表示に反映しなくなってしまいました。これではまったく更新していないように見えるので(笑)、いちおう引っ越しは進んでいますよ~、というご報告を新規記事ですることにしました。上記のネタになってるポッドキャストはほんとにおもしろいのでおすすめです! ですが、ダウンロード可だったリンクを見てみたら無効になっているようです。残念。でもYouTubeのほうは残っているようなのでぜひ♪


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個人的には、今年は年末のコミケも見送り、ひたすら家の断捨離・修繕etc.にいそしむ年の瀬です。(経過は「牛乃の日記」のほうに時々上げております☆)余裕がなくてチャンさんの情報もほとんど漁れておりませんが、いかがお過ごしなのでしょうか……(遠い目)。そして来年はどうなるのでしょう。世の中の変化が早すぎて、日常がSF化している感じがする今日この頃。馴染んだ有名人の訃報に驚いたり、年末のせいかテレビは昭和の名曲特番が多かったりで、気ぜわしい中でもなんとなくノスタルジックな気分を味わっている今年の師走です。


でも今年を振り返ると、このブログ的にはこうしてBloggerへの引っ越しが実現し、恐縮にも情報をいただく光栄な機会に恵まれ、チャンさんの小説以外の鋭い寄稿も読めて、充実した一年でした。何かの偶然でご訪問くださった皆様にも、心から御礼申し上げます。


さてさて、そんなわけでちょっと早いですが(そしてこのあとまだ過去記事の移動などするかもしれませんが)、とりあえずこのブログでの年末のご挨拶をさせていただきます。

Merry Christmas and Happy New Year! 

みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。