ブログアーカイブについて

☆文中でリンクしている過去記事を合わせて上げるため、アーカイブがランダムになっています。

2014/11/07

インタビュー音源: Sci Fi Lab (期間限定ダウンロード可?)

 ジョージア工科大学の学生さんによって運営されているラジオ局、WREKのSCI FI LABという番組のインタビュー音源です。公開録音で、観客とのQ&Aコーナーもたっぷりありました。

WREK: SCI FI LAB
(※引っ越し時追記:現在はリンク先のページがなくなっているようです)

ゲスト名が書いてませんが、書いている現在は"The Last Show"です。来週は"The Show Before"になるんでしょう。 (最初に別の短編朗読があって、チャンさんのコーナーは4分30秒頃から)

すべてのアーカイブをまとめたページが見当たらないので、二週間は公開されているってことですかね。 (私がアーカイブコーナー見つけてないだけだったらごめんなさい)

今はオンラインでも聞けますし、ありがたいことに音声ファイルもダウンロードできます。(リンク先の「 (128kbps / 24kbps)をクリック)オンラインで聞いたんですが、やはり聞き取れないところがあるのでダウンロードしました。チャンさんの発音はクリアで比較的聴き取りやすいんですが、もちろん知らない単語も多々あるし、Q&Aの質問のほうが聴き取れないと文脈がわからないし。(^^;) あとで速度を落として聞きなおそうと思います。

リスニング難民なりに聴き取れた範囲で内容をメモしますと……。
最新作の"The Truth of Fact, the Truth of Feeling"がらみのトピックが多かった印象です。

タイトルのインスパイア元がRoy Pascalの"Design and Truth in Autobiography"(たぶん)に出てくる一説であること、
新技術は便利なものだけど、そのマイナス面やそれによって何を失うかを意識するべきだ、と言うお話、
映画『her/世界にひとつの彼女』は好かんというお話(笑)、
みんなが携帯電話をアップグレードするたびに何トンもの有害廃棄物が出る、そんなに頻繁に新機種に替える必要あるか?いやクールなのは確かだけど…と言うお話、
"The Truth of..."で出てきたライフログみたいにひっきりなしに録画するのは個人的には好きじゃないじつはこのトークを録音されてるのも嬉しくはないんだけど(笑)……と言うお話…などなど。

…新しいテクノロジーはもちろん使うし、そういう業界で働いてるし、テレビ番組録画して見られるのも便利で嬉しい。でもその上で…と、いつもながら極端な話にならないようになさってて、ところどころ笑いもとっておられました。公式サイトもツイッターもやっておられないし、つくづくテクノロジーと賢い距離を保っておられますね。
タイトルが出たロイ・パスカルの本にも興味が出たんですけど、Amazonではえらい高値がついてる古書しかありませんでした。1960年の本なんですけど、電子化もされてないですね。GoogleBooksで覗くことはできます。

『her/世界でひとつの彼女』は未見ですが、ホアキン・フェニックスが女性型AI に恋する話、でしたよね。チャンさんのおっしゃるところでは、出てくるAIがあまりにカンペキに都合がよすぎて現実味もないそうで…まあなんとなく想像がつきます。でも男性向けの妄想映画って所詮はそういうものでは?なんて思うんですけど。(まあ、自分もある種の女性向け妄想映画で心地悪い感じがすることはあるので、それと同じようなことかもしれないですね)
とにかく、、そこをきちんと否定してくれちゃう感性をお持ちだから、読者としてはなんか信用できるなあ、って感じがするんでございます。

( あ、今キャストを見てみたら、そのAIの声をやってるのはスカーレット・ヨハンソンなんですね。彼女の『ルーシー』があらすじだけ見たら『理解』の翻案みたいな感じがしたのですけど。『あなたの人生の物語』に主演するというエイミー・アダムスも出ていますね。…余談ですが、ホアキンはちょっと前にフィリップ・シーモア・ホフマンと共演した『ザ・マスター』がなかなかよかったです……って、すいません、完全に横道(^^;))

…ちょうど今日、偶然掘り出したタイムトラベルレクチャーの音声を聴きなおしたところでした。新しい音声が手に入ったのはすごく嬉しいです❤

2014/10/26

パネルディスカッション動画:"Who and What Will Get to Think the Future?"

 2014/10/2に行われたパネルディスカッションイベント"Can We Imagine Our Way to a Better Future?"(私たちはより良い未来を想像できるだろうか?)の動画がYoutubeに上がってました。リアルタイムで配信されていたんですが、立て込んでて見損ねたので、落ち着いて見られるようにしてくださってウレシイです❤

チャンさんの参加したパートのテーマは"Who and What Will Get to Think the Future?"(誰が、そして何が未来を考えるようになるのか?)。私たちがすでにコンピュータに依存した思考形態になっていることをグーグルなどを例に話していて、これをCognitive Outsourcing(認知・知的活動のアウトソーシング)と呼んでいます。(以前からある言い回しらしい) ビジネス用語のイメージがある「アウトソーシング(外部委託」という言葉が、こういう文脈で使われてるのを面白く感じました。




早口なところ、笑いが出ているところがことごとく聞き取れないので(とくに司会者さんの言葉が聴き取りにくい。トランスクリプト求ム!!(^^;)(※引っ越し時追記: YouTubeに自動字幕が標準装備されるようになり、だいぶ楽になりました!(^^)) 全体の要約とは行きませんが、聞き取れた中から印象的だったところを記録しておきます。

最初に紹介していた、サイエンス・ライターのスティーブン・ジョンソンのエピソード。この方が使っているライティング支援ソフト(?)で、
「書いているものをスキャンして、随時役に立ちそうな情報を、個人的データベースから吐き出してくれるソフト」
ってのがあるらしいんです。つまりあるトピックと別のトピックを結びつける…人間なら「連想する」部分…をやってくれちゃうんですね。で、それを使ったとき
「このアイデアを思いついたのは自分か、それともソフトか?」

……問題提起以前に、「なにその便利なソフト。ほしい!」とか思っちゃったんですが(笑)、名前は出てなかったです。うーん気になる。
(※偶然ですが、このスティーブン・ジョンソンさん、今週Eテレでやる『スーパープレゼンテーション(※引っ越し時リンク切れです)』に出ます。テーマは「アイデアはこうして生まれる」。ちょっと関係がありそうかな?見てみようと思ってます♪)

次に、グーグルなどに私たちがますます頼りつつあること。
「第二の脳(secondary brains)」、前述の 「認知・知的活動のアウトソーシング(cognitive outsourcing)」といった言葉で強調されてます。

その次に司会者さんが持ち出したキーワードがセレンディピティ
偶然の力でなにかを発見することですが、これについても、たとえばGoogleやwikipediaを使うときにセレンディピティを経験している、と指摘しています。 でもチャンさんが強調していたのは、それが参照されるにとどまらず、その事項に関するおおぜいの考え方に影響を与えてくる、というところ。
(…同じセレンディピティとは言えるかもしれないけれど、ネットは同じ言葉をググると誰でも同じリストを目にするので、「行った図書館でたまたま隣にあった本」みたいな「偶然」とはかなり異質ですね)

後半、ソクラテスがした「書く事」(=「書かれたものを読むこと」)への批判を引用した「何かを実際に知ることの代わりに、知恵の幻影を作り出すだけ」というくだり(『パイドロス』に出てくるエジプトの神の話が元ネタらしい)や、「インターネットを奪われたら自分自身を失ったように感じるだろう。これは予想されていなかった副作用だ」など、やはりネットに依存することで何かが損なわれている、という見方が出てきます。が、いつもどおりそう過激な否定的回答とか対策とかいう話でなく、現状を言語化して指摘する、という感じ。時間がちょっと足りなかったかな、という印象はあります。いきなりシメの言葉を促されて笑ってるあたり。(笑)
(でもこういう、「言われてみればみんな感じてたよね」ということを、きちんと言語化して意識させてくれるのが、広義の知識人さんの役割ではと思います)

個人的な体験として、ツイッターを始めた頃から本を読むのが難しくなりました。長めのセンテンスを理解するのに必要な程度の「作業記憶」に苦労することがあるんです。 このパネルはそこまで「弊害」という切り口ではありませんが、ネットが思考に影響を与える、という意味では興味深いテーマでした。
(最近は自衛手段として、ネットに接続する時間を制限するように努力してます。現状自分に必要だからゼロにはできないんですけど。…チャンさんはツイッターも公式サイトもやってないようですが、意識しての選択なんだろうな~…いや、公式サイトがあってくれたら情報追うのラクになるんですけどね(^^;))

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このイベントは、SF作家ニール・スティーヴンスンの問題提起、「現在のサイエンス・フィクションは現実の科学者やエンジニアにインスピレーションを与えていない」に触発されたものとのこと。主催の団体"Future Tense"はシンクタンクとネットマガジンのコラボで、「社会を変革するようなテクノロジーを探求」してるんだそうです。

このコンセプトで作家・思想家等を交えたアンソロジー(Hieroglyph: Stories and Visions for a Better Future)も発行されていて、このイベントに参加してるチャンさん以外の作家さんは、この本に参加してる方たちですね。kindle版のサンプルから目次を見てみたんですけど、イベントに出た方の他にグレゴリー・ベンフォード、デイヴィッド・ブリン、ブルース・スターリング、ルディ・ラッカーなど、有名なSF作家さんたちも名を連ねてました。

ここではテッド・チャンさんの動画を貼らせていただきましたが、公式ページでは他のゲスト(同じくSF作家のニール・スティーヴンスン、エリザベス・ベアなど)のパネルもまとめて見ることができます。Youtubeにもあると思います。ご興味のある方はどうぞ。

公式ページ Future Tense: Can We Imagine Our Way to a Better Future? 

 

2014/07/12

『理解』も映画化!(と、ローカス賞)

 ずっと書きたかったのですが、なんやかやで情報が出てから一ヶ月以上経ってしまいました。(^^;)いやはや、すごいです。『あなたの人生の物語』に続いて『理解』も映画化始動のようです。脚本は『あなたの人生の物語』と同じくエリック・ハイセラー。(『エルム街の悪夢』等。最新作では監督もしているようです。allcinema: エリック・ハイセラー

ニュースソースはこちら。

Fox, 21 Laps Win Spec ‘Understand’, From Gang Behind ‘Story Of Your Life’
(Foxと21 Laps、"Understand"のスペック・スクリプトを"Story of Your Life"チームから獲得)
Spec scriptってなんぞや?と思って調べてみたら、依頼を受けて書くのではなく、脚本家が書き上がった状態で売る脚本のことらしいです。

(訳)Foxは『Understand(理解)』の先買権を獲得した。テッド・チャンの短編に基づく、エリック・ハイセラーによるSF作品のスペック・スクリプトだ。21 Lapsが制作予定。これは同様に21 Lapsとハイセラーがチャン作品から脚色した『Story of You Life(あなたの人生の物語)』の、カンヌでの記録破りの契約に続くものだ。そちらは北アメリカ・中国での権利をパラマウントが獲得し、エイミー・アダムス主演、デニス・ヴィルヌーヴ監督で来年撮影予定。"Understand"は、効果が予測不能の実験用ドラッグの投与で昏睡から目覚めた男の物語である。(後略)

記事の最後の Heisserer and Chiang are repped by WME. がよくわからなかったんですが…ハイセラー氏とチャン氏が共にWME (William Morris Endeavor)をエージェントにしている、ということ…かな?日本語Wikiでは映画や音楽のみですが、英語Wikiによると文学も扱っているようです。(解釈が違ってたらすみません)

 

もう一つ、脚本の売却を報じている記事。(じつは先に見たのはこちらのページ)。

Spec Script Sale: “Understand”
(※引っ越し時点ではリンク切れになっています)

こちらのページでは脚本を執筆したハイセラーさんのツイートが紹介されており、「16年で50作目」の映画・テレビ用脚本とのこと。。ページの筆者さんも書いておられますが、ほんとに量産型(Productive)な方ですね。寡作なチャンさんとの対比がなんとも。(笑)。このページでは「2014年に売れた27本目のスペック・スクリプト」とのこと。(アメリカで、でしょうね)で、下のコメント欄を見ると、昨今このスペック・スクリプトがあまり売れない…という話になってます。まあ、それはまた別の話。

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『理解』はチャンさんの作品で一番強烈に「萌える」作品(断言)でもあり、正直チャン氏の作品では一番好きです。読み返し頻度もダントツ!(これが「一番最初に書いた作品」と聞いたときは、「どこまですごいんだこの人」と、もうイヤんなりました!(笑))

…相変わらずチャンさんご本人のコメントが見当たらないのが気になりますが、個人的にも思い入れありまくりの作品なので、どうせなら成功してほしいです。どういう脚色なのか、どういう映像になるのか・・・そしてキャストも気になります!もう、映画化して原作並みに萌える出来栄えだったら同人誌作りますからね!コミケにシマが出来るはずですし、ムーパラのプチオンリーにも参加しますよーん!(←先走りすぎ(笑))

原作未読の方には、とくに腐女子感覚を解する方にはもう太鼓判でオススメ!です!(もちろんそういう意図で書かれたものではまったくないし、BL臭は皆無なんですが、だからこそ、これはもう「宿命の敵」路線の王道JUNEとしか。作家さんはこの目線で評価されてもご迷惑だと思いますが(^^;)、オールドJUNE世代のご同好の方には分かっていただけると思います!特にラスト…!!)

日本語版は短編集『あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)』収録。

 

 

英語版テキストは、以前はネットでも読めましたが、読めなくなったようです。
権利が大金で売れたせいですかね。(^^;) 復活しないかもしれませんが、リンクだけしておきます。

(Infinity Plus) Understand a novelette by Ted Chiang

英語朗読音源はこちらで聞けます。

(Internet Archive) Ted Chiang: Understnd

最後に、ついでのようですが"The Truth of Fact, the Truth of Feeling"がローカス賞ファイナリストに選ばれていました。(賞にはあまり関心がないので淡白ですみません(^^;))獲得は逃したようですが、もはや常連ですね。ネットでの無料公開だったことを考えると、そういう作品がきちんと賞の対象として評価されるって、(もちろん以前の実績あってのことではありますが)素敵だなあ、と思います。

Tor.com: Announcing the 2014 Locus Award Winners

作品については、以前こちらでリンク等ご紹介しています。
(個人的には、前作"The Lifecycle of Software Objects"より好きです)

新作"The Truth of Fact, the Truth of Feeling" (2013/8/30)

2014/04/24

『あなたの人生の物語』映画化続報とヒューゴー賞ノミネート

 情報が出てからだいぶ経ってしまいましたが、『あなたの人生の物語』のキャストの話題。エイミー・アダムスと交渉に入ったというニュースが4/2に出ました。時期的にアダムスのアカデミー賞ノミネートとからめた書き方ですね。

Amy Adams Circles Denis Villeneuve-Helmed Alien Tale ‘Story Of Your Life’

まだ「交渉」という報道でしたが、思ったよりビッグネームでびっくりしました。これは普通に日本でも劇場で見られるかしら…(リアルの身辺にご同好がいないせいか、こんなに評価を得ている作品なのにマイナーな印象を持っていたもので、DVDの輸入盤で見られれば御の字、くらいに考えていました(^^;))監督のお名前がDenis Villeneuveさんとなっていて、前の報道と変わりましたね。脚本はそのままでEric Heissererさん。どうなるんでしょうねー。ご本人のコメントなりはいまだにみかけません。

さて、もう一つのヒューゴー賞。ネットで公開されていた"The Truth of Fact, the Truth of Feeling"がBEST NOVELETTE部門にノミネートされたそうです。

TOR.com: Announcing the 2014 Hugo Award Nominees

新しいテクノロジーとその人間の受け取り方、というあたりがテーマ的に"The Lifecycle of software objects"と似てはいましたが、個人的にはLifecycleより扱い方に深みを感じて、進化なさったなーと(僭越にも)感じた作品でした。他のノミネート作品を読んでないので予想はしませんが(というか、もともとあまり賞レースには興味がわかないほうなので…(^^;)スミマセン)、とにかく安定のノミネート常連という感じですね。おめでとうございます♪

以前にも貼りましたが、再度ウェブ上で読めるページにリンクしておきます。
The Truth of Fact, the Truth of Feeling by Ted Chiang
(※引っ越し時点ではリンク切れです)